2008年 03月 10日
正直この日をもっとも恐れていた。なぜなら、訪問地の数と、移動距離が今日が一番多いからだ。右も左もわからない外国人135名を、一人も見失うことなく速やかに移動することは本当に至難の業。 目的地は広島。朝8時36分京都発の新幹線に乗車すべく、ホテルでの点呼が始まる。「○×はまだ寝ているのか?」「皆チェックアウトしたか?」 無事プラットホームへ。ところが、新幹線が京都駅に止まるのはほんの2分。ドアがついた瞬間に、一気に皆を押しこむ。150人が乗るにはどうしても数分かかる。「早くのれ~~」あの時の光景が今でも目に浮かぶ。 無事に乗車、目的基地の広島に向かって、一気に走る。外国人にとっては新幹線そのものがシャッターチャンスの一つ。乗車中は、皆写真を取り合ったりと忙しくしていた。 目的地の一つは宮島。世界遺産に登録されている厳島神社へ向けてフェリーに乗り込む。そんなこともあり、今日は一日中点呼をしていたような気がする。この日も天候に恵まれ、旅行者には本当に多くのシャッターチャンスがあったに違いない。 昼飯は、名物の“牡蠣”。生牡蠣と焼き牡蠣を食べる。日本人であることを思い出した瞬間であった。 次の目的地は、平和記念公園と原爆資料館。ここは、予想以上に大きな印象を学生たちには与えたようだ。参加者の中には、資料館の中で涙ぐんでいたものも数人見かけた。 4時20分になった。集合時間だ。 4時30分になった。集まった人数はほとんどゼロ。 正直あせった。なぜなら5時半の新幹線に乗らなければならないためだ。指定席で予約しているため、その新幹線を逃すと、数百万円の損失が生じる。オーガナイザー全員が走った。「皆、急げ!時間がない!」 僕は、平和記念公園へ走った。「Is there any Wharton student here?!」 その時、一人のアメリカ人女性を発見した。ウォートン生だった。彼女は、折り紙を持っていた。何度も失敗しながらも、折鶴を折ろうとしていた。僕は、その光景に感動した。彼女は、アメリカ人として多くのことを考えていたに違いない。そしてその思いを日本の文化である折鶴に託そうとしていたのだ。 僕は、ジレンマに陥った。新幹線の時間まであとわずか。 僕は、彼女の行為をそこで止めた。二人でモニュメントの前に立ち、お祈りをした。折りかけの鶴をそこに託した。そして、彼女の手をつかみ共に走った。 無事に新幹線に間に合った。 名古屋に向けて、車輪は動き出した。 でもあの瞬間以来、僕は自分のとった行動に罪を感じていた。彼女の思いを台無しにしたからだ。無論、新幹線に乗ることが、とにもかくにも最優先だが、一個人として僕は自分のとった行動が嫌いだった。その夜、僕は彼女と偶然出会った。彼女の気持ちに対し、一日本人として、再度感謝の意を伝えた。彼女のその時のスマイルを今でもはっきりと覚えている。 言葉にはならない、何か大切なものを学んだ一日となった。
by ny_since1999
| 2008-03-10 23:12
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人生の日記です。 写真はシルクロードの玄関、西安から・・・。過去:日本を変えるために生まれた会社とともに生きる。現在:University of Pennsylvania The Wharton School 未来:アジア市場に夢を描く。 by NY_since1999 カレンダー
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