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Wharton MBA 記  ~Carpe diem - 今を生きる~

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2009年 02月 23日

経営者 坂本幸雄

経営者 坂本幸雄_a0100263_953013.jpg先日、日経新聞の一つの記事が目に留まった。半導体大手のエルピーダメモリが台湾の半導体メーカー三社と経営統合することで大筋合意したという記事だ。エルピーダはパソコンなどに使われる記憶用の半導体メモリー(DRAM)で世界三位。すでに提携している同七位の力晶半導体、力晶とエルピーダの合弁会社である瑞晶電子、八位の茂徳科技と経営統合を視野に入れた交渉を進めてきた。経営統合がうまく進めばサムスンに次ぎ世界第2に浮上する。

僕は、このエルピーダメモリの社長である坂本幸雄氏の大ファンの一人。坂本氏と初めて出会ったのは2004年。同社が東証一部に上場を決め、坂本氏が社長として初めて公に姿を現した時だ。僕は、その時のことを今でも鮮明に覚えている。とにかく、バイタリティーが凄かった。話を聞いているだけで、向こうの勢いにのまれそうになるくらいに。坂本氏は、かつて甲子園を目指した野球少年。日本体育大学に進み野球部の監督を目指すなど、“一般的”な大企業の社長の経歴とは似ても似つかない。だからこそ、坂本氏の話は面白い。“普通”では考えられない展開で、“普通”では考えられないスピードで話が進んで行く。僕は、彼の人間としての魅力に圧倒され、以来、彼が姿を公に現す度に何度も話を聞きに行ったことを覚えている。

さりながら、「企業の使命は利益の最大化である」と唱えるミルトンフリードマンは、きっと坂本氏のことを名経営者とは呼ばないだろう。なぜなら、業績的にエルピーダメモリがこれまで歩んできた道のりは、想像を絶する茨の道だったからだ。名経営者の定義が“利益のサステイナブルな成長の実現”だとするならば、こんにちの 坂本氏を名経営者と呼ぶことはできないのは事実なのかもしれない。だが、僕の内には根源的な疑問もある。その名経営者の定義が正しいのなら、一年で価格が半分にもなってしまうDRAMの市場で、一体誰が名経営者になれるというのだろう。

エルピーダの生きる環境は決して甘くはない。今回の台湾勢との経営統合は、もはや最後の一手とも言える荒業。かつて、世界の半導体市場を睥睨したあの日の丸半導体の復活を一身に背負って生まれたエルピーダメモリ。彼の背負うものの重さは、従業員の生活だけではない。彼には、日本の半導体の復活がかかっている。

上述したけれど、自分は坂本氏の話を聞きに何度も足を運んだ。そして坂本氏のこんな言葉を聞くたびに、僕は何度も鳥肌が立ったことを覚えている。

“世界一になるのは俺達だ”

世界が不況に陥ろうとも、強い闘志を持つ坂本氏。いわんや、環境は決して甘くはない。茨の道は今後も続くであろう。でもあきらめるのはまだ早い。その闘志が、今回は3社経営統合という大きな大きな勝負にあらわれている。願おう、ミルトンフリードマンが満足できる日がいつの日かエルピーダに来ることを。その時、日の丸半導体は復活する。

坂本幸雄

by ny_since1999 | 2009-02-23 07:37


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